近江竜之介インタビュー

photo:©ryunosuke omi

2022年5月20日(金)更新
インタビュー場所:HIS大阪支店でオンライン

スカイランニング
近江竜之介 Omi Ryunosuke
標高2,000mの景色。
山を駆け、空を翔る。

スカイランニングという競技、聞いたことがあるだろうか。その名の通り、空を駆けのぼるような競技であるという。
その中でも、次世代を担う選手として頭角を現しているのが、近江竜之介さんである。
国内外で活躍に場を広げる彼に、スカイランニングという競技の特徴と魅力について語ってもらった。

近江竜之介(イメージ)

―スカイランニングとは、どのような競技ですか。

スカイランニングとは、山岳スポーツの一種で急峻な山岳地帯で行われます。「快速登山」とも呼ばれています。いくつかの種目に分かれており、主に3種目に出場しています、1種目目が「VERTICAL(バーティカル)」です。5キロで累積標高差1000mを駆け登ります。2種目目が「SKY(スカイ)」といって、距離は20km~49km。2,000m以上の標高で走ります。3種目目に「SKYULTRA(スカイウルトラ)」、50km~99kmまでの距離で、累積標高差3,200mを走ります。
※日本スカイランニング協会ホームページより下記一部抜粋
『スカイランニングの競技種目は、時間・距離・特性に応じて7つに分類されています。日本選手権ではSKY・ULTRA・VERTICAL・SPEED・SKYSNOWの5種目、世界選手権ではSKY・ULTRA・VERTICALの3種目が実施されています。』

―スカイランニングの魅力を教えてください。

一つの山でも季節によって全く感じ方が異なります。木々の色も、路面も、雪があったりなかったり。1年を通してずっと楽しく走り回れるというのが大きな魅力です。どんどん山頂が近づいてくるのを見て、ここまで走ってきたんや、自分の足でここまで登ってきたんや、と達成感を感じるのが山の魅力かなって思います。

近江竜之介(イメージ)

―山の中を走るには様々な道具や準備が必要かと思いますが、如何でしょうか。

レースでは「必携品」と言って、絶対持たないといけない道具があります。大会によって規定はバラバラで、厳しいレースもあれば、緩いレースもあります。海外の大会では、携帯電話一つ持っていればそのほかは制限なし、みたいな大会もあるため、その時はかなり軽装で臨みます。バーティカルレースでは、ほとんど荷物を持たずに山頂目指します。レース時間はおおよそ30分~1時間です。

―大会はどのようなスケジュールで行われるのでしょうか。

基本的に1日目はバーティカル、2日目はスカイ、3日目はウルトラかスカイウルトラと、数日にわたって行われます。それぞれの種目での順位とは別に、コンバインド(複合競技)としても順位付けが行われ、これはバーティカルとスカイの合計で競います。


整備された陸上競技場のトラックの上ではなく、木々が生い茂る山の中で行われるスカイランニングという競技。
短距離走やマラソンのような瞬発力や持久力だけではなく、自然を相手にした知識や経験値も問われるとも彼は言った。


高きに登るは低きよりす。
競技との出会いと自然の中で。

幼少時から山の中を走りまわっていたと言う近江竜之介さん。
彼とスカイランニングとの出会い、そしてスカイランニングならではの競技の特徴について聞いてみた。

近江竜之介(イメージ)

―幼少時のお話を聞かせてください。

4歳のとき、僕が走れる歳になったころ、父が山へ連れて行ってくれるようになりました。一緒に歩いたり、駆け上ったり。これが山との出会いです。父は元々マウンテンバイクを趣味で行っていました。姉と弟の3兄弟なんですけど、姉は幼少時同じように山走りやマウンテンバイクしていたのですが、結局はダンスの道に進みました。弟は一緒にトレイルランやスカイランニングをしています。物心ついた頃にはずっともう走ってたので、何か、それが普通やって思ってたんですよ。

―学生時代は如何でしたか。

学校の持久走大会などで周りの子たちより速く走ることができ、楽しさが出てきました。中学で陸上競技部に入って、それなりの成績を残せたので、推薦をいただき高校へ進学しました。その時は、陸上と山岳の二刀流で活動していました。
山岳競技は元々好きで、景色が変わっていくし、コースもそれぞれ違うし、乗り越えていくというか、課題を掘っていくっていうのが楽しいです。陸上競技はちょっと違って、練習そのものより記録会や大会で、タイムや成績を残すことに達成感があると思っています。

近江竜之介(イメージ)

―天気や山の地形など、レースでは自然の影響は大きいですか?

天気によって大会当日のコンディションが変わるので、補給を取るタイミングであったり、やはり影響は大きいです。雨だと寒いし、晴れると気温も上がってくるので、補給のタイミングがずれると、熱中症になったり、足がつったりしちゃうんですよね。臨機応変に変えていかないと、山は走れないかなと改めて思います。

―レース中に足がつったりなどアクシデントは起きるのでしょうか?

僕は結構失敗します。まだまだ経験値が浅いというか、他の選手に比べると、全然まだまだ未熟なので。今から沢山レースに出て、やっぱり大会を絞るんじゃなくて、いっぱい挑戦していって、自分に合った補給や足がつらない方法とか、走り勝つっていうのを経験していきたいなと思います。

―近江さんの活動拠点である京都愛宕山はどんな場所ですか。

標高は2,000mもないんですけど、急峻な場所が多く、ランニングのレースを想定した練習がしやすいです。関西には2,000mを超える山が少なく、近場でトレーニングできるの理想的な山が愛宕山でした。


幼少時に家族の影響で山と出会い、陸上競技と並行しながらも、自ら選んだスカイランニングの道。
インタビューの中で、彼が本当に山を愛し、自然を愛していることが伝わってきた。
競技中では見られない笑顔で恥ずかしそうに自身の経験値が浅いと言い放ち、謙虚に今後の改善を図る姿には、引き込まれる魅力があった。


東の上田、西の近江。
日本の双峰として世界へ。

スカイランニング界で日本を代表する選手が上田瑠偉選手
(1993年生まれ、2019年Skyrunner World Seriesにてアジア人初の年間王者)である。
近江竜之介さんは次世代を担う選手として、国内では「東の上田、西の近江」として注目をされている。
世界でのエピソードや、レース中の心境を聞いてみた。

近江竜之介(イメージ)

―世界のレースはどのような雰囲気でしょうか?

まず日本と違うのは、観客の多さや応援の盛り上がりの凄さなんです。声量とか熱量が全然違います。コースに沿ってずらっと観客が並んでるような感じで、日本では味わえないような盛り上がりがすごい印象に残っています。海外の選手達も、大会にかける気合や姿勢がが全然違って、ひたすらベストタイムを狙って走っている選手が多くて、モチベーションが違うなと感じます。もう、真剣勝負。生活がかかった選手が多くて、弱肉強食みたいな世界です。

―近江さんは3年前にユースで世界一を取られています。その時のお気持ちは?

初めての国際レースだったんですけど、その時は海外選手がどれくらいのレベルなのか全く分からない状態で走っていたんです。ゴールして自分が一番びっくりしたというか、まさか一位になるとは思っていませんでした。突破して、逃げ切ることしか考えてなくて、もう無我夢中でした。この経験で、よりスカイランニングが楽しくなりました。

近江竜之介(イメージ)

―レース中は何を考えて走っていますか?

距離が短いレースだと、タイムや順位ばかりに気がいき、自分の走りとか相手選手にしか集中しないんですけど、長距離のレースでは長い時間を走らなければならないので、タイムや順位ばかり気にしすぎると精神的にも気が滅入ります。そういう時に、ふと遠くの山がに入ったりと、長距離のレースのほうが景色を見る時間は多いんじゃないかなって思います。伊豆のレースでは、たまにちらっと富士山を見たりして綺麗やなと思いながら走っています。景色にはめちゃめちゃ助けられてます。2,000mを超える山だと、ほとんど雲の上を走っています。ずっと山頂を見て登ってきて、ぱっと後ろを振り返った時の景色は絶景です。

―ライバルとの駆け引きと、自然との駆け引きとどちらの方が難しいですか。

ライバルより、やっぱり自然との駆け引きですね。トップ選手やレベルが高いほどライバルとの戦いが激しいんですけど、スカイランニングでは、選手同士励まし合ってゴールに向かうというのが魅力の一つでもあります。一般の大会だと、選手同士で自然を相手にしっかりゴールを目指そうという雰囲気であることが、良いところかなと思っています。


次世代のホープとして世界の大会で戦い続ける近江竜之介さん。
世界で感じたことは、競技へかける選手たちの思いの強さの違いであると言う。
知らぬ土地で天候もコースの知識も浅い条件下、ライバルや自然との駆け引きを制するのは決して容易ではないであろう。
世界での経験を冷静に分析し自身の走りに昇華している姿は、ベテラン選手に勝も劣らないものがあった。


山には山頂っていうのが
絶対あるんです。
選手として、指導者として、
山の頂を目指して。

高校卒業後は、プロアスリートとしての活動の傍ら、
TEAM SKY KYOTOの合同代表者としての指導者の一面を持つ近江竜之介さん。
自身の思いや今後の目標について語ってもらった。

近江竜之介(イメージ)

選手としての長期目標は「世界一」の山岳ランナーになる事です。それを達成するにあたり、成し遂げたい目標は直近の「Skyrunning World Championships2022」で優勝することです。ショートからミドルディスタンス、ロングディスタンスでも活躍できるオールラウンダーな選手になりたいと思っています。

TEAM SKY KYOTOとしては、世界に負けないような選手を輩出していきたいです。現在、日本代表が5人いるのですが、もっともっと選手層を厚くして、10人以上代表選手を輩出することが目標です。選手の育成を一番メインとして活動していき、一緒に戦える仲間を増やしたいなって思っています。

経済的にはかなりギリギリなのが本音で、アルバイトを掛け持ちで行っています。高校を卒業するときに、この世界で食べていけるのは一部のみ、厳しい世界だと分かってはいました。人が作った道を進むのがいいと思う人もいると思うんすけど、僕は何かそういうのがあんまり楽しく思えなくて、道を切り開いて行くのが今の目標というか意味があります。

山には山頂っていうのが絶対あるんです。そこに向かって一つ一つ課題を乗り越えていくというか、自分の足で一歩一歩進み続けて山頂に辿り着いたとき、きっとそこにはすごい達成感があるのではないかと思います。


高校卒業後、大学進学という選択肢があった中で、 近江竜之介さんはプロとして、指導者としての道を歩むという決断をした。
その後も着実にプロとして世界での実績を残し、2022年5月から再び海外遠征へと、高みを目指して走り続けている。


「山には山頂っていうのが絶対あるんです」と言い、 高みへと一歩一歩進み続けたいと彼はインタビューの中で語っていた。
しかしながら、山頂はひとつではない。連なる山峰のように、下ることなく次の山頂へと登り続ける。
彼が思い続ける限り、彼が歩み続ける限り、山の頂は高くなり続けるであろう。そう強く感じた。

彼がこれからも世界へ挑戦し続けるために、指導者として次世代の育成を行うために、
延いては今後の日本スカイランニング界を担い、スカイランニングというスポーツの成長のために、
彼の夢の実現には多くのファンやスポンサー、企業、社会の助けが必要となるであろう。
HISスポーツもその一員として、引き続き彼の活躍を応援している。
(インタビュアー:吉田由紀子、記事:木本昊)

近江竜之介(イメージ)

メッセージ

幼少期から山を走り続けてきました。
高校を卒業してからは、プロ山岳ランナーを目指して頑張っています。
現在は国際大会などにもたくさん出場し、経験を積んでいます。
目指す場所は「世界一」です。
応援よろしくお願い致します!

PROFILE プロフィール

生年月日:2001年9月1日
出身地:京都市
活動拠点:愛宕山
所属:adidas TERREX


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CAREER 経歴

2018年
Skyrunning youth world championship コンバインド優勝
2020年
スカイランニング日本選手権 VK部門 1位
2020年
スカイランニング日本選手権 SKY部門 4位
2021年
Skyrunning world championships2021 VK部門 7位
2021年
Skyrunning world championships2021 SKY部門 8位
2021年
スカイランニング日本選手権 VK部門 1位
2021年
スカイランニング日本選手権 SKY部門 1位

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