[vol.7]ドルトムント不調に見える“トゥヘル改革”の確かな手ごたえとは?(2016.2.26)
2月第2週に開催されたDFBポカール、そして第3週からはヨーロッパリーグ決勝トーナメントも始まり、1週間に2試合を行う過密日程のドルトムント。2016年に入り、早くも7試合を消化している。
第19節、昇格組インゴルシュタットに2-0で勝利したものの、ガボン代表FWピエール・エメリック・オーバメヤンの先制ゴールには疑惑が残り、その翌節は敵地でのヘルタ戦でスコアレスドローとなるなど、一部では「ドルトムントが不振に陥っている」との声も聞こえた。しかし、リーグ後半戦開幕後のブンデスリーガ5試合、DFBポカール1試合、EL1試合を6勝1分0敗で乗り切り、そのうち5試合を無失点、2試合を1失点で終えたチームに「不調」という言葉を当てはめるのは、いささか乱暴だ。
トーマス・トゥヘル監督が新たに就任し破竹の公式戦11連勝を記録した昨夏と、それから半年が経過した現在では、状況が大いに異なる。今のドルトムントは、いわば「幹を作る時期」から「枝を作る時期」への移行期にあるのだ。
例えば2月9日のシュツットガルト戦で用いられたフォーメーション。あくまで数字上はそれまでと同じ4-3-3だったが、以前までの前線3枚がオーバメヤンの1トップ+2シャドー気味だったのに対し、この試合ではドイツ代表MFマルコ・ロイスの1トップ+2ウイングという形を採用している。右のオーバメヤンと左のDFエリック・ドゥルムをタッチラインぎりぎりまで開かせ、シュツットガルト両SBのカウンター攻撃参加を封じるというこの作戦は見事にはまり、周知のようにドルトムントはDFBポカール準決勝の切符を手にした。
そして同18日のポルト戦では、攻撃時に左SBマルセル・シュメルツァーを前線に上げ、後方は3バック、つまり3-2-4-1のような形を取りつつ、ボールを失った直後には前任者ユルゲン・クロップが植え付けた“ゲーゲンプレッシング”を用い、またポルトがゆっくりとビルドアップをしてくる時には4-2-3-1に戻して守備ブロックを形成。試合中にフォーメーションを何度も変えるという柔軟さを披露している。
第21節ハノーファー戦前の会見でトゥヘル監督も「我々の願望は、(登録選手が増えすぎず)限られた人数の戦力で戦うこと、そして選手たちがフォーメーションやピッチ上の顔ぶれなどに影響されることなく、どんな状況でも協調しながらプレーできることだ。チームはその道を歩み始めている」と、ドルトムントが新たなステージに突入したことを示唆している。シーズン前半戦に同クラブが見せた、「ほぼ同じメンバーを起用し“幹”を作る」という作業は、ひとまず完成したと見ていいだろう。
ドイツ代表MFイルカイ・ギュンドアンやオーバメヤンら根幹を成す選手が、負傷により一時的に離脱していたことはもちろん無視できないが、後半戦この7試合でスターティングメンバーの顔ぶれが同じだったことは、ただの1度もない。そして約1年間出場がなかったトルコ代表MFヌリ・シャヒン、足首の炎症により今年に入ってからメンバー外が続いていたMFスヴェン・ベンダー、今冬トップチームに合流したばかりの17歳MFクリスチャン・プリシッチなどは、予想に反しいきなり先発で起用されている。「すべての選手が、毎週、毎日のトレーニングで(ポジション争いの)競争を勝ち抜かなければならない」というトゥヘル監督の言葉に嘘偽りはなく、誰がキックオフの笛をピッチ上で聞くことになるのか、蓋を開けてみるまでは全く分からない状況なのだ。
これは、前半戦快進撃の立役者である日本代表MF香川真司にも当てはまる。事実、第18節ではメンバー入りするも出場はかなわず、第20節ヘルタ戦ではベンチ外という屈辱も味わった。周囲の様々な憶測や報道が飛び交う中で、少なからずストレスを抱えたこともあったという。
「こういう、少し風向きが悪い状況だから周りは騒ぐけど、それは誰もが通るところで…。結局は自分を信じて、ピッチの上で証明していくしかないし、階段をまた1つ上って、ここを乗り切っていきたいなと思います」
第22節レヴァークーゼン戦、香川は再び90分間をベンチで過ごした。しかし、試合終了の笛と同時に笑顔で指揮官と抱擁をしていた背番号23に、もう迷いはない。まだ約3分の1を残す今シーズン、さらなる精神的たくましさを身に付けた香川の力が必要になる時は、必ずやってくるはずだ。
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